はじめに
最近では,会社員も積極的に資産運用をする人が増えてきました。
代表的なものに,株取引があります。
株取引の場合,あらかじめ「源泉徴収ありの特定口座」を選択しておけば,確定申告不要(利益が出た瞬間に証券会社があらかじめ税金を差し引く)になるため,多くの会社員の方は,このタイプの口座を選択されていることと思います。
では,FX(外国為替保証金取引)の場合は,どうなのか?
当然,FXで得た利益も課税対象となります。
「税金を申告する義務があることを知らなかった」では済まされません。
かつてFX取引のカリスマ,女王と呼ばれたトレーダーが池辺雪子さん。
FX取引で得た利益が3年間で約4億円あり,1億3千万円の脱税を行った容疑で執行猶予付きの実刑判決を受けました。
国内の店頭FX業者,取引所FX業者は自社で利益がでた人物のリストを税務当局に提出しています。
マイナンバー制も導入され,よりトラッキングされやすい環境も整備されました。
「このくらいの利益なら大丈夫だろう」と安易な考えではいけません。
どのような条件で確定申告が必要となるのか?きちんと理解し,確定申告漏れがないようにしましょう。
- 金融商品は3種類の課税に分けられる
- 課税対象となるタイミングは決済時
- 会社員における確定申告の有無と課税・非課税の境界
- FXの利益算出時の注意事項
- 書籍代,パソコン代は経費として整理
- 会社にFXをやっていることを知られたくない場合の対応方法
金融商品は3種類の課税に分けられる
金融商品は色々な種類があり,それらに投資して利益が出れば税金を納める必要があります。
金融商品には以下の3種類の課税形態があり,金融商品ごとに課税のかかり方は異なります。
・総合課税
・源泉分離課税
・申告分離課税
各課税の特徴は,以下の通りとなります。
このうち,FXは「申告分離課税」に該当します。
課税対象となるタイミングは決済時
FXで得た利益(売買益でも金利スワップでも)は,約定しない限りは課税の対象となりません。
決済していない含み益やスワップポイントは決済するまで対象とならないことは,押さえておくべき重要なポイントとなります。
会社員における確定申告の有無と課税・非課税の境界
会社員の場合,年収と雑所得の額で確定申告の有無と課税・非課税が分かれます。
以下の通り分類されます。
※注:複数の証券会社に口座を保有する場合,すべての取引で生じた損益を通算します。
※注:他の先物取引に係る雑所得(先物・オプション,カバードワラント,CFDなど)と通算します。
パターンDとEは,年収2,000万円を超える高額給与所得者のため,年末調整対象外となり,確定申告の義務が生じます。
FXの利益の有無によって確定申告が決まるわけではないため,高額給与所得者については本記事の対象外とさせて頂きます。
パターンAのように,利益が20万円以下であれば,確定申告は不要となります。
パターンBのように,利益が20万円を超えれば,確定申告は必要となります。
パターンCのように,損失が出た場合は,損失を繰り越すかどうかで確定申告を本人の意志で決めることになります。
「3年間の繰越控除」という制度があり,これは3年先の確定申告までの間に,もし利益が発生してもあらかじめ確定申告している損失があれば,その損失と向こう3年の間に発生した利益を相殺することができるものです。
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FXの利益算出時の注意事項
年間利益額は,証券会社が年1回送付する「取引報告書」に記載されています。
複数の証券会社を利用している場合,それらをすべて合算して計算します。
また,FXによる所得は,税法上「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。
よって,FXと同様に「先物取引に係る雑所得等」に分類される商品先物取引(先物・オプション,カバードワラント,CFDなど)と通算して評価する必要があります。
もう一点注意すべき点として,株式取引の損益とFX取引の損益は合算することはできないことです。
株式の損失とFXの利益を相殺するようなことは,税法上はできません。
書籍代,パソコン代は経費として整理
経費が発生すれば,FXの利益から控除できます。
代表的な経費は,書籍代,セミナー受講料などの勉強に使った費用です。
また,取引に使うPCも経費として考えられます。
会社にFXをやっていることを知られたくない場合の対応方法
勤務先の就業規則に副業は禁止とある場合,FXが副業に該当するのか心配されている方もいるかと思います。
FXは金融取引であり,通常は副業の扱いになることはありません。
FXが副業になるのであれば,株取引や投資信託も金融取引であり,副業に該当することとなります。
とはいえ,FXであまりにも大きな利益が出た場合は,会社に知られたくないこともあるかと思います。
FXでの利益は,先で述べたとおり申告分離課税であり,税率は所得にかかわらず一律20.315%(所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)になります。
このうち,所得税(復興特別所得税含む)は,確定申告と同時に自分で納めるので問題ありません。
問題となるのは,住民税です。
住民税の支払い方法は,2種類あり,給料から差し引く形で会社が納付する「特別徴収」と,自分で税金を納める「普通徴収」があります。
確定申告時,「特別徴収」を選択すると会社に知られてしまいます。
税額が増えたことが地方自治体から会社に通知されるためです。
ですので,自分で直接納付する普通徴収を選ぶ必要があります。
普通徴収にする方法は,確定申告時に「自分で納付」欄にチェックを入れることで対応できます。
確定申告する必要があるのか,きちんと確認し,確定申告漏れがないようにしてください。
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